「Palm Sutra(掌経)」は、手のかたちを通して、沈黙の詩を描き出すアートシリーズです。
手や腕を写したモノクロ写真に、電球や石などのイメージをデジタル加工によって重ね、さらに短い題名と文章を添えています。
掌は、触れ、つかみ、放し、何かを形づくる場所です。日常の何気ないしぐさでありながら、そこには人の意志や感情、記憶、そして言葉になる以前の思索が映し出されます。
たとえば、手で狐の形をつくり、その指先で折り紙の狐をつまもうとする作品「ただ、つまむ」。
紙はただの紙であり、手もただの手。それでも、手が紙を折り、指がその形に触れたとき、そこに「狐」が現れます。それは、その瞬間に生まれたものなのか。それとも、もともとそこに在り、私たちが気づいただけなのか。
「Palm Sutra」が描くのは、ひとつの答えではありません。
手と物、形と言葉、現実と想像。そのあわいに生まれる小さな問いを、モノクロームの静けさの中にとどめています。







